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    再生 奇跡の商店街

    2015.03.26 Thursday

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       再生 奇跡の商店街

       

      • バレンタインデーのイベントでにぎわうドーム広場。丸亀町商店街再生のシンボルだ(2月14日)
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          人口減社会を迎え、空洞化した中心市街地の活性化が大きな課題となっている。高松市の丸亀町商店街は再開発の結果、生活に必要な店や施設がコンパクトに集約され、新たなまちづくりのモデルケースになると注目されている。高松市の「まちを縮める」取り組みを紹介する。

          

          高松市中心部、丸亀町商店街の広場に入ると、誰もが息をのむ。直径26メートル、天を覆う巨大なクリスタルガラス製の円形ドーム。広場に面して、ルイ・ヴィトンやティファニーなどのブランドショップが並ぶ。

          洗練された街角を歩き、医師の瀬尾憲正(66)が往診に向かう。顔なじみから声をかけられ、笑顔で足を止めることもたびたびだ。

          商店街は南北470メートル。2006年以降、次々と再開発ビルが建ち、新たな店が入居してにぎわいが戻った。その再生劇は「丸亀町の奇跡」とも言われ、全国から注目を集める。生まれ変わった商店街は、実は、お年寄りのまちでもある。

          瀬尾は、商店街のほぼ中央、再開発ビル4、5階にある医療モール「美術館北通り診療所」の院長。診療所は内科や眼科など七つの科を備え、瀬尾ら8人の医師が勤務する。24時間対応で在宅診療も行う。

          ビルの7〜9階は分譲マンションで、再開発前の商店経営者や外から移ってきた高齢者らが暮らす。ほかにも、低層階が商業スペース、高層階が住宅の再開発ビルは4棟あり、総戸数は約180を数える。

          「まちなかでの一人暮らしに、娘は反対したんですよ」。住人の伊川文子(81)はいたずらっぽく笑った。

          伊川は住宅併設の呉服店に嫁ぎ、店を切り盛りした。約20年前に転居し、店も廃業したのに、また戻ってきた。「食品も洋服も、買い物は歩ける範囲で間に合い、本当に便利。車も要らないし」。かつての商店主仲間とランチを楽しんだり、洋裁教室やスポーツジムに通ったりと、まちなかでの生活を謳歌(おうか)している。

          自治医科大(栃木県)の教授だった瀬尾自身、Uターン組だ。定年が近づいた頃、院長就任を商店街側から打診され、「故郷の高松に恩返しをしたい」と引き受けた。診療所は10年に開業。「診療所が地域の核になれば、お年寄りは安心して帰って来られる」と自身の役割を胸に刻む。

          クルマ社会の進展、郊外への人口流出と大型商業施設の進出――。商店街は1990年代、空き店舗が増えて衰退の兆しが見え始めたが、再開発で以前はなかった食品スーパーや飲食店もできて、まちの姿は一変した。今後、介護施設や温浴施設を新設し、住宅も約200戸増やす計画だ。

          事業を主導する高松丸亀町商店街振興組合は、キーワードに「医食住」を掲げてきた。理事長の古川康造(58)は「暮らしに必要なものがすべてそろう商店街になれば、居住者も買い物客も集まり、にぎわいが戻ってくる」と力を込める。

          今、その手法を学ぼうと、全国の自治体や商店街の関係者が年間1万人以上、視察に来る。日本と同様、中心市街地の衰退が問題化している韓国からも訪問が増えているという。

          古川は、住民が回帰した商店街に、新たな可能性を見いだした。「都市を縮める」という役割だ。

          人口減社会を迎え、郊外部に広がった道路や水道など、インフラの維持管理コストが市の財政を圧迫している。古川は視察を受け入れるたび、「ここで生活したい、と思える商店街を作らないといけない。それが『都市を正しく縮める』ことにつながる」と説く。

          結果的に、税収にも貢献できる。売り上げ増は、法人税や消費税の増収につながる。再開発を終えた4街区では建物の資産評価が上がり、固定資産税は計1億4000万円と、再開発前の約9倍に上昇した。

          商店街が再開発に乗り出したのは、意外にも、バブル景気さなかのことだ。瀬戸大橋の開通もあって地元経済界が沸き立つ中、一部の商店主は悪い予感を抱いていた。(敬称略)

          ◇街区ごとにテーマ設定

          丸亀町商店街はA〜Gの7街区で構成される。再開発は街区ごとに地権者が組合を作って行い、事業を終えたA、B、C、Gではそれぞれ「セレクトショップゾーン」「フードコート」「美と健康とケア」「都心生活・都市観光」とエリアテーマが設定された。

          市街地の再開発は、土地の高度利用を図るため、都市再開発法に基づいて建物の共同建て替えなどを行う。ドーム広場のあるA街区は最も早く完成。事業費69億円のうち、国と香川県、高松市から計28億円の補助を受け、残りはビルの保留床の売却などで資金調達した。全7街区の総事業費は約500億円と見込まれる。

          

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